万歳、春駒、ほおずき売り、バナナのたたき売り、節談説教、にわか、琵琶法師、江州音頭、浪花節、落語、幇間、ストリップ、相撲、三味線流し、見世物小屋、猿回しといった芸能に携わる人々の姿が記録されている。
写真の多くは1970年代のものである。
私が放浪遊行の芸能の残片を日本中に訪ねた期待は、芸による身すぎ世すぎの単純素朴な基本を、身をもって確かめたかったためである。時すでにおそく、今に残ったもののほとんどは形骸であったし、「保存」されたものには野をかけ巡っていたころのいぶきはなかった。しかしそれでもそういう中から、われわれ芸能者の受け継ぎそこねた芸の、心と腕前を、いくつか捜し出すことはできた。 (「万歳の門付体験記」)
このエッセイも1971年に書かれたもの。その後さらに40年以上が過ぎた今、著者の残した写真はかつての日本の姿を伝える貴重な記録となっている
2013年2月10日、ちくま新書、900円。