アララギ系の歌人(左千夫、茂吉、赤彦、文明、節、憲吉、子規)が100首中35首を占めている。北原白秋(6首)より土屋文明(7首)の歌が多いことにも異論はあるかもしれない。しかし、それは誰が選をしても起きる問題であって、あまり気にしても仕方がない。
むしろ興味深いのは、次のような部分。
正直に言うと、私は会津八一の歌が苦手である。どうも生理的に受けつけないのだ。
(…)正直に言って、釈迢空の歌も、どちらかと言えば私には苦手な部類と言わなければならない。
何とも正直な告白(?)で、微笑ましさを感じる。これも会津八一や釈迢空の歌が好きな人からすれば「何で?」となるところだろう。
ただ、ここには永田さん個人の好みにとどまらない問題があるようにも思う。それは、この2人の歌人を現在の短歌史がうまく位置づけられていないという問題である。そうした位置づけの不安定さが、2人の歌に対する苦手意識にもつながっているのではないだろうか。