2013年01月25日

もの洗い歌の系譜

先日、ある歌会で「小豆を洗ふ」という歌があった。
その歌の批評をする時に、「短歌には、もの洗い歌の系譜があって…」などと冗談交じりで言ったのだが、実際に、台所で何かを洗っている歌というのはけっこう見かける。
嘘つきて憎みてかつは裏切りて夕べざぶざぶ冬菜を洗ふ
         河野裕子『ひるがほ』
すでに怒りを言葉にしない妻にして笊に苺を洗う音する
         吉川宏志『夜光』
怒りつつ洗うお茶わんことごとく割れてさびしい ごめんさびしい
         東 直子『青卵』

試しにこうやって歌を引いてみると、その特徴が見えてくる。
一心にものを洗いながら、そこに何か感情をぶつけたり、吐き出したり、鎮めたりしているのだ。

最近、台所に立つ機会が多いので、こういう歌の味わい方がだんだんとわかるようになってきた。

posted by 松村正直 at 19:44| Comment(0) | メモ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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