2013年01月23日

黒瀬珂欄著 『街角の歌』


2006年に「ふらんす堂」のホームページに1年間連載された文章を1冊にまとめたもの。
1月1日から12月31日まで、1日1首、全365首に200字程度の鑑賞を付けている。

「煙突」「ポスト」「飛行場」「ビル」「トラック」「変電所」「図書館」「パチンコ」など、都市を彩る様々な風景を詠んだ歌。1首1首も面白いのだが、それらが集まることで、明治から現代にかけての都市の移り変わりと、そこに生きる人々の心理の変化が鮮やかに見えてくる。

日付と対応した歌が引かれていることもある。
ビルあまた悲鳴をあげて立つ街を飲み水求めさまよい歩く
          廣田由佳理  (1月17日)
都べに兵ら乱るる夜ごろなほまどかなる面を妻に向けゐき
          山本友一   (2月26日)
おほいなる天幕のなか原爆忌前夜の椅子らしづまりかへる
          竹山 広   (8月9日)

有名な歌人の歌だけでなく、非常に幅広く歌を集めている点も、本書の特徴だろう。
365首あって、同じ歌人の歌は出てこない。つまり365人の歌が載っている。
そうしたアンソロジーとしての面白さも十分に味わえる1冊である。

2008年4月1日、ふらんす堂、2000円。

posted by 松村正直 at 08:38| Comment(0) | 歌集・歌書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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