2013年01月06日

栗原俊雄著 『20世紀遺跡 帝国の記憶を歩く』

「20世紀遺跡―近現代史をめぐる」という題で毎日新聞に連載された記事の中から22回分を選び、加筆修正して一冊にまとめたもの。

取り上げられているのは「東京・仮埋葬地」「北九州・軍艦防波堤」「福岡県飯塚・ボタ山」「川崎市・登戸研究所」「東京都台東区・はなし塚」「長野・文化柱」「和歌山県美浜町・アメリカ村」など。いずれも20世紀の歴史と深く関わりのある場所だ。

著者は『戦艦大和―生還者たちの証言から』『シベリア抑留―未完の悲劇』『勲章―知られざる素顔』などの著書を持つ新聞記者。近現代史の当事者から丹念に話を聞き、それを基に本を書くという地道な作業を続けている。本人の言葉を借りれば、〈それは、誰かが伝えなければ「なかったこと」になってしまう記憶を、歴史に記録する試み〉である。

こうした考え方には非常に共感する。
僕が「短歌往来」に「樺太を訪れた歌人たち」という連載を始めたのも、まさにこうした思いからだ。

戦争責任の問題に触れる時の著者は、新聞記者らしい正義漢ぶりを発揮していて、そこにやや違和感を覚える。ただし全体としては、現場を歩いて貴重な証言を集め、自らの力で近現代史について深く考察した良質な一冊と言っていい。

2012年11月25日、角川学芸出版、1600円。

posted by 松村正直 at 00:23| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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