1992年にマガジンハウスから単行本として刊行された『失楽園物語』に加筆して文庫化したもの。写真、岩切等。
タイトルに「廃墟霊」とあるが、これは霊の話ではない。純粋な(?)廃墟探訪のルポルタージュである。「廃墟霊」というタイトルは、おそらくホラー文庫にふさわしいように出版社サイドが付けたものなのだろう。廃墟=心霊スポットといった捉え方は、この本の意図とは全く違う。
廃墟探訪はここ十年くらいでブームとなり、数々の写真集やルポルタージュが出版されている。それに対して、本書はバブル経済華やかなりし頃に書かれたもの。流行を先取りしていたと言っていいだろう。著者の冷静な筆致で描き出される15編の話は、今読んでも新鮮な魅力に満ちている。
2002年1月10日、角川ホラー文庫、619円。
2012年12月08日
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