近世和歌を読んでみようということで、まずは香川景樹から。
代表歌49首とその鑑賞、略歴、筆者の解説がコンパクトに一冊になっている。
埋火の匂ふあたりは長閑にて昔がたりも春めきにけり
ゆけどゆけど限りなきまで面白し小松が原のおぼろ月夜は
敷島の歌のあらす田荒れにけりあらすきかへせ歌の荒樔田(あらすだ)
鑑賞に取り上げられている文章にも面白いものがいくつもある。「京都は六十くらいの人の如し。江戸は二十斗(ばかり)の人のうきうきしたる国なり」とか、「歌はもてあそびものにあらず、もてあそばるるものなり」とか。
〈柴の戸に鳴きくらしたる鶯の花のねぐらも月やさすらむ〉という自作について、「春夏の月は横からさすなり」と注釈しているのにも注目した。これは、春から夏にかけての満月の軌道の低さを言っているのだろう。
2011年5月25日、笠間書院、1200円。