副題は「コミュニケーション能力とは何か」。「コミュニケーション能力」は昨今はやりの言葉だが、この本はそうした流行に便乗したハウツーものではなく、これからの時代に必要な「対話」の言葉のあり方について記したもの。
第三章〈ランダムをプログラミングする〉、第四章〈冗長率を操作する〉、第五章〈「対話」の言葉を作る〉のあたり、「塔」の夏の全国大会で伺った話とも重なるところで、理解がさらに深まったように思う。
韓国への留学、ヨーロッパでの演劇の上演、日本各地でのワークショップなど、様々な現場から汲み取られた著者の言葉には、説得力がある。職場での「対話」の言葉の欠如が「無意識のレベルで女性の社会進出を阻んでいる」ことなど、ハッとさせられる指摘が多かった。
言葉や演劇に関する著者の分析や理論は、非常におもしろい。ただ、それを教育や政治へとつなげていく、ある種、啓蒙的な部分をどのように受け止めたら良いのか。僕の中にはまだ迷いがある。
2012年10月20日、講談社現代新書、740円。
2012年12月06日
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