2012年12月03日

山口晃著 『ヘンな日本美術史』

山口晃が日本美術史を通じて自らの絵画論を記した本。
カルチャーセンターでの講義が元になっているので読みやすく、かつ面白い。

「なるほど」「そうか!」と気づかされる話が実にたくさんあった。
先日、著者の絵のすごさを見てきたばかりだが、それを明確に言語化・論理化する力のすごさを今回は感じさせられた。

印象に残った部分をいくつか引いてみよう。
「鳥獣戯画」などの絵巻物を見る時に昨今よく言われるのが、これはアニメの源流であるとか云った事ですが、(…)現代から遡る視点で昔のものの持つ意味をあれこれと言うのは、むしろ好ましくありません。
その絵が描かれた時代を起点にして、なるべくこっち向きの視点を獲得する。「こっち向き」と云うのは、要するに、その時代からどうなるか分からない未来を見据えた視線を一生懸命想像する方が、あるべき態度かと思います。
そのジャンルが生まれて、さまざまに展開する基の部分と云うのは、後の世からすると、当たり前にすぎて見えづらくなっていますから、その新しさや、当時の盛り上がりを理解するために、時代背景を知る事が必要になってきます。

こうした歴史の見方は、どのジャンルにおいても大切なことなのだと思う。

2012年11月10日、祥伝社、1800円。

posted by 松村正直 at 00:30| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。