この号で他に目に付くのは、長編小説が2編連載されていることだ。渡辺淳一「冬の花火」と三浦綾子「石ころのうた」がともに連載の第14回。
中城ふみ子について書かれた「冬の花火」が角川「短歌」に連載された小説であったことを、今回初めて知った。今は短歌雑誌に小説が連載されることなどないので、ちょっと意外であった。
しかし、この号で一番注目したのは、茂吉の特集でも「冬の花火」でもない。
読者短歌である。
佐藤佐太郎と斎藤史がそれぞれ特選・秀逸・佳作を選んでいるのだが、斎藤史選の特選7首のなかに、小池光の1首があったのだ。
折れやすい首だから群を擢(ぬきん)でて硝子細工の馬のかなしみ住所は「仙台市大手町」となっている。東北大学の大学院に在籍していた頃だろう。
斎藤史は選評で
とらえ方の角度がややちがうだけで、たしかにとらえている。結句の「かなしみ」を表面に言うか、言わないかが、考えどころ。出したために歌全体が薄手になる場合もあることを。この作品では、透明になることはかまわないが、薄くはしたくない―と迷うところであろう。と記している。(つづく)
こういうことを発掘してもらえるとほんとに楽しいです。
上の世代では当たり前かもしれないですが、私なんかは知らなかったことです。
歴史の中継地点としてとても大切な情報ですね。
是非、続けてください。
渡辺淳一さんの与謝野晶子評伝も短歌誌初出だったのでしょうかね?
ありがとうございます。