2012年11月16日

田中水江著 『奇妙な時間(とき)が流れる島サハリン』


1993年〜94年にかけてサハリンのユジノサハリンスク教育大学で日本語を教え、その後も何度もサハリンを訪れることになった著者の記したドキュメンタリー。あまり期待せずに読んだのだが、実に良い本だった。

著者は足掛け6年にわたって、ホルムスク、ユジノサハリンスク、オハ、ノグリキ、ドリンスク、ネヴェリスク、モネロン島、ウグレゴルスク、アレクサンドロフスク・サハリンスキー、ポロナイスクなど、サハリンの主要都市をめぐっている。

そこで著者が出会ったのは、ロシア人だけでなく、朝鮮人、日本人、ポーランド人、ニヴヒ、タタール人など、多くの民族の血を受け継ぐ人々であった。第二次世界大戦後に引き揚げが認められなかった朝鮮人をはじめ、様々な理由でサハリンに留まった人がいたことは知っていたが、この本にそうした人々から直接聞いた話が多数収められている。

民族、言語、国家、戦争、家族など、実にさまざまなことを考えさせられる一冊であった。

1999年11月25日発行、凱風社、1800円。

posted by 松村正直 at 18:41| Comment(0) | 樺太・千島・アイヌ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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