2012年11月14日

山田航歌集 『さよならバグ・チルドレン』


2009年に角川短歌賞と現代短歌評論賞を受賞した作者の第1歌集。
花火の火を君と分け合ふ獣から人類になる儀式のやうに
青空に浮かぶ無数のビー玉のひとつひとつに地軸あるべし
旅行鳩絶滅までのものがたり父の書斎に残されてをり
僕らには未だ見えざる五つ目の季節が窓の向うに揺れる
靴紐を結ぶべく身を屈めれば全ての場所がスタートライン
「いい意味で愚かですね」とコンビニの店員に言はれ頷いてゐる
君が代もテレビゲームも定型に畳まれやがてニッポンになる
うすぐもり天使注意の標識を視野にかすめていつものカーブ
ひなげしといふ形容詞あつたならこんな日はきつとひなげき気分
ブックエンドくらゐの距離をおいたままふたりは日々に赦(ゆる)されてゐた
4首目は春・夏・秋・冬ではない「五つ目」の季節について詠んだ歌。何とも新鮮な発想である。あるいは四季という言葉を持ったことで、私たちは五つ目の季節を見ることができなくなってしまったのかもしれない。

5首目は靴紐を結ぶ姿勢がクラウチングスタートのイメージを呼び起こしたのだろう。「スタートライン」はこの歌集のキーワードである。「スタートライン」という小題の連作が2つ収められているし(これはちょっと珍しい)、献辞にもあとがきにも略歴にもこの言葉が使われている。

全体は4章に分かれているが、1章の角川短歌賞受賞作「夏の曲馬団」に断トツに良い歌が多いと思った。

歌集名「さよならバグ・チルドレン」は、ルイ・マル監督の映画「さよなら子供たち」を踏まえているのだろうか。

2012年8月17日発行、ふらんす堂、2200円。

posted by 松村正直 at 19:38| Comment(0) | 歌集・歌書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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