今さらという感じになってしまったが、「塔」10月号の十代・二十代歌人特集から、印象に残った歌を引いておきたい。
ぼかしたら油彩のようになる畦を君と歩いたではないですか最近また十代・二十代の会員が増えてきているようで嬉しい。
/千種創一
道連れのをみなの忌ともなるらむか桜桃忌過ぎていよよ雨ふる
/篠野 京
クレマチス何か可笑しいクレマチスおまえの顔が私は好きよ
/鈴木寛子
でてこない涙のために内側で膨らみすぎた風船を割る
/中山靖子
「楽園のハンモック」っていう店に入る焼かれた鶏肉のため
/廣野翔一
わたくしの、手紙が届くたびに鳴る、マリオが死んだときの音楽
/吉田恭大
不意に過ぎる背後の足音あれは父あるいは父に似る何者か
/常川真央
ふくらはぎ削ぐように塗るクリームの、嘘ならばもっと美しく言え
/大森静佳
わたしにも漏れなくあるのか母性とは堤をゆけばウミウシがいる
/丸本ふみ
被災者の数がメダルの個数へと変わってしまう新聞の隅
/川上まなみ
切磋琢磨して、どんどん良い歌を作っていってほしいと思う。