2012年11月13日

「塔」2012年10月号


今さらという感じになってしまったが、「塔」10月号の十代・二十代歌人特集から、印象に残った歌を引いておきたい。
ぼかしたら油彩のようになる畦を君と歩いたではないですか
                  /千種創一
道連れのをみなの忌ともなるらむか桜桃忌過ぎていよよ雨ふる
                  /篠野 京
クレマチス何か可笑しいクレマチスおまえの顔が私は好きよ
                  /鈴木寛子
でてこない涙のために内側で膨らみすぎた風船を割る
                  /中山靖子
「楽園のハンモック」っていう店に入る焼かれた鶏肉のため
                  /廣野翔一
わたくしの、手紙が届くたびに鳴る、マリオが死んだときの音楽
                  /吉田恭大
不意に過ぎる背後の足音あれは父あるいは父に似る何者か
                  /常川真央
ふくらはぎ削ぐように塗るクリームの、嘘ならばもっと美しく言え
                  /大森静佳
わたしにも漏れなくあるのか母性とは堤をゆけばウミウシがいる
                  /丸本ふみ
被災者の数がメダルの個数へと変わってしまう新聞の隅
                  /川上まなみ
最近また十代・二十代の会員が増えてきているようで嬉しい。
切磋琢磨して、どんどん良い歌を作っていってほしいと思う。

posted by 松村正直 at 01:00| Comment(0) | 短歌誌・同人誌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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