2012年10月06日

永田淳歌集 『湖をさがす』 (その1)


第2歌集。
君の寝坊すなわち子らの寝坊にて学校までを送りてゆきぬ
塩化カルシウムの白き袋の中ほどが折れて立ちいる十王堂橋
炭酸の泡がやがては消えてゆくごとくに母の死は忘れらる
角度もち格子戸ごしに差し込める弥生のあさひ湯舟に見たり
枯れ蘆の根元は緑(あお)みいるならん春の潮の寄れる河口に
日盛りの何も通らぬ道の上を高く鳶の影は過ぎゆく
バス停にバス待ちいると思いしが不意に道路をわたり始めぬ
台風ののこしてゆきし涼しさに触れつつ文を書き終わりたり
食卓に「明日の玲」へと手紙置き寝ねにゆきたり「きのうの玲」が
水浅く流れの見えぬ桂川冬の電車に越えゆくところ
2011年の一年間、ふらんす堂のホームページに毎日連載された「短歌日記」を一冊にまとめたもの。題は「みずうみをさがす」ではなく「うみをさがす」。1ページに3行書きで一首ずつ載っている。

前年の8月に亡くなった母(河野裕子)の面影が、しばしば歌の中にあらわれる。9首目の「玲」は娘さんの名前。他にも、草花や川・湖などの自然を詠んだ歌と家族を詠んだ歌に良いものが多かった。

2012年8月24日、ふらんす堂、2000円。

posted by 松村正直 at 08:42| Comment(0) | 歌集・歌書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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