「開放区」は年3回(2・6・10月)の発行。
野一色容子さんのエッセイ「ナンジャモンジャの木―清原日出夫評伝拾遺(その一)―」を読む。以前この「開放区」に連載されて、昨年『ナンジャモンジャの白い花―歌人清原日出夫の生涯』として出版された文章への追加である。
出版後にも、重要な新資料が、とくに北海道資料から出てきたので、このエッセーでそれを補ったり訂正したりしたい。とのことで、その姿勢がまず素晴らしいと思う。重要な新資料については次号で扱うとのことなので楽しみに待ちたい。
今回、印象に残ったのは、次の部分。
もちろん、敢えて詳しく本に書かなかった部分も多い。清原日出夫の遺族が健在であり、遺族のプライバシーに関することはここでもやはり書かないつもりだ。評伝のようなものを書く場合、こうした問題はどうしても出てくるだろう。微妙で難しい問題である。私も以前「高安国世の手紙」を連載していて、同じようなことを経験した。連載一回分の原稿をまるまるボツにしたことがある。
ご遺族の立場からすると、書いてほしくない部分、書かれたくない部分というのが当然ある。取材や資料の提供などでお世話になっている以上、それを無視してまで書くというのは、なかなかできることではない。
そのあたりが、プロのノンフィクションライターではなく、歌人が歌人を書く際の難しさのような気がする。