2012年08月18日

選歌に殺されし(その1)


宮柊二を詠んだ歌としては、永田さんの次の歌も忘れ難い。
選歌に殺されしとう宮柊二をこの頃肯定しているしかも本気で
             永田和宏『百万遍界隈』
「殺されし」という表現にギョッとする歌だが、この発想の元になっているのは、たぶん次の歌だろう。
宮先生を蝕みしもの戦争と病ひと選歌ありしを思ふ
             高野公彦『地中銀河』
宮柊二の肉体を蝕んだものとして、戦争や病いと並んで「選歌」が挙げられている。
高野公彦著『鑑賞・現代短歌5 宮柊二』の中には、次のような文章がある。
選歌についやすエネルギーも厖大だった。毎月一回「コスモス」編集会があるが、それに間に合わせるために二日連続で徹夜して選歌をした。千人以上の会員の歌(一万首以上)の全てに眼を通し、自分で選ぶのである。編集会の当日、柊二は睡眠不足と疲労のため眼のふちに黒い隈(くま)ができていた。
二日連続で徹夜というのだから凄まじい。
ちなみに、この鑑賞で取り上げられている宮柊二の歌は
締切を守りてくれぬ編輯部の歌詠みどもを憎みつつ寝ん
                  『忘瓦亭の歌』
というもの。結社誌を毎月毎月刊行し続ける苦労というのは、今も昔もきっと変らないのだろう。何とも身につまされる歌である。


posted by 松村正直 at 00:17| Comment(0) | メモ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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