副題は「歌人 清原日出夫の生涯」。
副題にある通り、60年安保を詠んだ歌人として知られる清原日出夫の評伝である。「開放区」84号(2009年2月号)から7回に渡って連載された文章に大幅に加筆したもの。清原に関する評伝としては、おそらく初めてのものであろう。清原の生い立ちや60年安保後の生涯など、これまで詳しく知られていなかった内容も多い。
北海道中標津町にある清原の生家は、1961年に高安国世が訪れてエッセイや歌に残している場所だ。その「清原牧場」が現在も清原の兄の孫の世代に受け継がれ、100頭以上の牛を飼育する大きな牧場になっていることなど、今回初めて知った。
何処までもデモにつきまとうポリスカーなかに無電に話す口見ゆ清原日出夫の再評価にもつながる貴重な一冊であり、ぜひ多くの方にお読みいただきたい。
一瞬に引きちぎられしわがシャツを警官は素早く後方に捨つ
産み月に入りし若牛立ちながら涙溜めいること多くなる
新雪(あらゆき)に脚切りし馬の鮮血が続けり椴の森内深く
それぞれは秀でて天を目指すとも寄り合うたしかに森なる世界
2011年12月15日、文芸社、1400円。