「塔」の昭和29年10月号の編集後記でも、高安は平井貴美子について触れている。
□この夏に堪えられず平井貴美子さんが亡くなつた。「塔」にとつても大きな損失だ。今更に人の命の切なさを思う。この死を無駄に終らせないために、遺歌集を作ることを考えているうちに、これを機会に僕たちの歌集を次々に出そうと思うようになつた。思い切り廉価で、多くの人に親しまれるような形をとろう。そのためにはプリントでもいい。美しく着飾つたような歌集は僕たちには似合わない。新しい感覚で新時代の歌集を一人一人の手へ。この文章で高安は『平井貴美子歌集』の話とともに「僕たちの歌集」を出す計画について述べている。おそらくガリ版刷りの『真実』は、この一冊だったのだろう(7月発行なので少し時期が早いけれど)。
そして『平井貴美子歌集』の奥付を見ると、
印刷所 京都市上京区紫竹上柴本町73 川岸印刷商社とある。ガリ版刷りの『真実』を製版した「川岸由人」は、この印刷会社の人ではないかと思う。