2012年08月02日

二つの『真実』(その1)


高安国世の第二歌集(発行順では最初の歌集)『真実』は、昭和24年7月30日に、高槻発行所から刊行されている。B6判182ページで、1ページ4首組み。定価は180円。

高槻発行所というのは出版社の名前ではなく、当時高安が所属していた関西アララギ会の結社誌「高槻」の発行所という意味である。発行所の住所は「高槻」の編集発行者であった大村呉楼の自宅となっている。

実は、この高槻発行所から出た『真実』以外に、一回り小さなガリ版刷りの『真実』というものが存在する。昭和29年7月14日発行で、巻末には「製版 川岸由人」と書かれている。90ページで、1ページ8首組みとコンパクトだ。

両者には他にも漢字の字体の違いがある。前者が旧字(正字)であるのに対して、後者のガリ版刷りのものは新字を用いている。例えば表紙を見ると、前者は「高安國世 眞實」であるが、後者は「高安国世 真実」となっている。これは発行の時期が5年遅いので、それだけ新字が広まっていたためかもしれない。

では、なぜこのガリ版刷りの『真実』は作られたのであろうか。そして、製版者の「川岸由人」とは一体何者なのか。

posted by 松村正直 at 04:01| Comment(2) | 高安国世 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
恐らく、京都市左京区高野で小さな印刷屋を営んでいて、歌もたしなんでした川岸由人氏だと思います。
Posted by K.N at 2014年04月27日 13:22
K.Nさま
情報をお寄せいただき、ありがとうございます。印刷屋をしていただけでなく、ご自身も短歌を作っておられたのですね。
Posted by 松村正直 at 2014年04月27日 20:13
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