副題は「映画と現実の狭間」。
大阪大学の教授で人間酷似型ロボット(アンドロイド)研究の第一人者である石黒とサイエンスライター池谷の共著。「スター・トレック」「マトリックス」「ターミネーター」「A.I.」「スター・ウォーズ」「攻殻機動隊」などのSF映画を素材に用いて、ロボットと人間の関係や最新のロボット研究について語っている。
石黒のロボット研究の方向性は
私はこれまで「人間とは何か」という問いに少しでも答えようとして、ロボットの研究をしてきた。という一文に、明確に示されている。ロボットのためのロボット研究ではなく、人間を知るためのロボット研究なのである。つまり、ロボットにできることを調べることによって、逆に人間にしかできないことが明らかになるわけだ。
もっとも、著者が何度も書いているように、そうした研究を進めていくうちに、ロボットと人間との境界はいつしか曖昧になっていく。ロボットと人間の違いは本当にあるのか。
人間は「悲しい」という「こころ」があるから「涙を流す」という行動をとる、と一般には考えられている。しかし、ロボットが「涙を流す」という行動をとれば、そこに「悲しい」という「こころ」が存在するように見えてくるのだとも考えられる。
(…)人間の社会性の原理とは、実体がないけれどもこころとしか言いようがない、感情としか言いようがない、意識としか言いようがない何かが存在するということをお互いが信じ合っている、そのつながりの輪を指すことになるだろう。その輪の中にロボットが加わる日も近いのかもしれない。
2010年2月3日、PHPサイエンスワールド新書、800円。