『中島榮一歌編』を読んでいると、中島栄一と高安国世の関わりについて、いろいろと見えてくることがある。
かくて我は俗人かなと嘆き言ひし中島栄一いま我は会ひたし1947(昭和22)年の歌。この歌は、中島の
高安国世『真実』
かくて吾は俗人かなと嘆きつつ帰りきて人の悪口を書き列ねたりという1935(昭和10)年の歌が元になっている。中島と高安の出会いは1934年のことなので、二人が出会ったばかりの頃の歌だ。
中島栄一『指紋』
この中島の歌は「仮面」という一連に入っており、そこには他に
教養あるかの一群に会はむとすためらはずゆき道化の役をつとめむといった、かなり自虐的な歌がならんでいる。両親の行商を手伝った貧しさや尋常小学校しか出ていない学歴は、中島に強いコンプレックスをもたらしたようだ。
洗練されし会話つづきて不用意にはさみし言は黙殺されぬ
吾をわらふ友らの前によりゆきてしどろもどろにわれも笑ひ居き