永田さんの歌集を読んでいたら、こんな歌があった。
南蛮はおそらく赤髪(あかげ)に由来せる我がため南蛮(なんば)を植えいたる祖父「*南蛮=とうもろこし」という註が付いている。
永田和宏『華氏』
これを読んで思い出したのが、次の一首。
トウキビをナンバと呼びいし祖父のなし畝には花の苗ばかりなりもちろん「祖父」と言ってもそれぞれ別の人の話なのだが、どこか共通しているものを感じる。「とうもろこし」のことを「なんば」と呼ぶのは、関西の方言だろうか。ある程度の年齢より上の人は普通に「なんば」と呼ぶようだ。
永田淳『1/125秒』
もともと「とうもろこし」は「唐」+「唐土(もろこし)」だし、「とうきび」は「唐黍」、「なんば」は「南蛮」で、いずれも外来種であることを指している。僕自身は「とうもろこし」を「とうもろこし」としか呼んだことがないのだが、こういう歌を読むと、地域や世代によって様々な呼び方があり、それがまた深く記憶に結び付いていることがわかって面白い。