2012年06月27日

石川英輔著 『江戸人と歩く東海道五十三次』


著者は江戸時代に関するエッセイを多数執筆されている方。「身分制度」「封建制」「鎖国」といったマイナスイメージで語られることの多かった江戸時代を、実は平和で文化水準も高く生き生きとした社会であった捉え直す試みを続けている。

この本も、そうした立場で書かれた本の一冊。2007年に淡交社から出版された『ニッポンの旅 江戸達人と歩く東海道』を文庫化にあたり改題したものである。

江戸時代の東海道の旅の様子が、多数の絵図を交えて細かく記されており、当時の人々の生活や文化、ものの考え方などがよくわかる。例えば、伊勢参りの流行について記した部分で著者は
一極集中の現代と違って、徳川幕府はものごとを一点に集中させない方針を貫いた。東京に何でもかでも集めるのが基本政策となっている現代民主政府と違って、「三都」と称し、都の機能を果たす都市が三つあった。
と述べ、さらに京都(帝都)、江戸(政都)、大坂(商都)に次ぐ第四の都として、伊勢(神都)の存在を挙げている。こうした分析一つを取ってみても、いろいろと考えさせられるものがある。

2010年10月1日、新潮文庫、400円。

posted by 松村正直 at 00:44| Comment(2) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
おお、伊勢は「第四の都」ですか……。
すごい。
Posted by おおつじ at 2012年06月27日 15:44
そうなんです。すごいのです。

「神都」という言葉は、先日、伊勢銘菓をいただいた時に
初めて知ったのですが、広辞苑にも載っているれっきとした
言葉なのですね。

江戸時代の伊勢参りの集客力(?)や経済効果もすごかった
ようです。

…などと書きつつ、僕はまだ一度も行ったことがないのですが。
Posted by 松村正直 at 2012年06月28日 00:34
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。