副題は「誰でも画期的に短歌がよめる 楽しめる本」。
短歌の入門書である。
第一部は「言葉に敏感になる」、第二部「短歌の技法を知る」、第三部「作品を発表する」という三部構成になっている。具体的な作品を読み解きながら大事なポイントを一つ一つ説明しており、読みやすくまたわかりやすい。
単なる歌のテクニックだけではなく、著者自身の人生観や短歌観が書かれているのが、この本の大きな特徴だろう。
この一冊を読んだあとに、もっと短歌を作ろう、上手くなろうとおもってもらうと嬉しい。けれど、明日から誰のせいにもしない強(したた)かな心をもって人や事物と付き合い、自分にしかできない生き方をしようとおもってもらうほうがもっと嬉しい。
なにかにすくってもらうほど私たちの棲む世界は単純でもなければ、短歌は誰かをすくうほど生やさしいものではないと私は考えています。
私は、自分がなによりもまずひとりの清潔な生活者でありたいとおもっています。つまり、人間として、なるべくできる限り自分をありのままに生きたいと願っているのです。
こうした文章は、普通の短歌入門書にはあまり見かけないものだ。でも、こうした部分に、著者の思いは一番つまっているように感じる。それは、著者自身の歌にも通じる強い祈りのようなものではないだろうか。
2012年5月28日、すばる舎リンケージ、1400円。