おととい紹介した加藤一二三著『将棋名人血風録』は将棋の本ではあるけれど、一般向けに書かれている本なので、局面図や棋譜は載っていない。
将棋そのものよりも、棋士の人となりとか人物像を描いた本ということになる。それで十分に面白い。
棋譜というのは棋士の残した作品である。つまり、短歌に置き換えて言えば、作品を読んでいるのではなく、作者を読んでいるわけだ。
この二つがなかなか切り離せないのは、短歌だけの話でもないのだと思う。
「将棋に人生を持ち込むと甘くなる」羽生善治言へりわれら頷く
小池光『静物』
長考ののち穴ぐまへもぐりゆく米長の玉(ぎょく) 午後のひだまり
永田和宏『饗庭』
今日もまた若手の攻めにあえもなしダブルの背広の谷川浩司
小高賢『長夜集』
将棋を題材にした短歌を詠んでいるのは、ほとんどが男性。女性の歌はまだ見たことがない。
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