2012年05月31日

小松正之著 『宮本常一とクジラ』

水産庁の漁業交渉官として国際捕鯨委員会などの場で活躍した著者が、宮本常一の本をたどりつつ、西日本に残る伝統捕鯨の跡をフィールドワークして訪ね回ったもの。

登場するのは、山口県長門市、三重県鳥羽市、和歌山県太地町、長崎県五島列島、佐賀県呼子町、対馬、壱岐、周防大島など。

著者の主張は明確だ。

海に囲まれた日本は水産資源を有効に活用することが大切で、資源の枯渇を防ぎつつ、漁業に力を入れていくことが、海沿いの町や離島の活性化には必須だというもの。そのために、外国に対しても主張すべき点はきちんと主張して、捕鯨を守らなくてはいけないということになる。

時おり、排外的なニュアンスの文章や自分の功績を自慢する文章がまじるのが気になるが、著者の述べるところはよくわかる。そうした著者の信念の根元には、生まれ育った町の風景があるらしい。
筆者の原点は、漁村の生まれであるというまぎれもない事実である。岩手県陸前高田町という、沿岸漁業とワカメ、カキなどの養殖業、沖合で操業するイワシ巻網漁があり、そしてクジラを追って南氷洋や北太平洋の金華山沖に行くもの、北洋のサケ・マス漁業に従事するもの、三九トンの木船で遠洋マグロはえなわ漁業に従事するものがあった。

日本の漁村に往時の活気を取り戻したい、そういう熱い思いが著者を支えているのであろう。

2009年2月25日、雄山閣、2000円。

posted by 松村正直 at 20:10| Comment(0) | 鯨・イルカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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