2012年05月30日
加藤一二三著 『将棋名人血風録―奇人・変人・超人』
将棋の世界に「名人」が誕生したのは、江戸時代の慶長17(1612)年のこと。今年は、それからちょうど400年目にあたっている。昭和10年に実力名人制に移行してから誕生した名人は12人。そのすべて(本人を除く)と対局したことのある著者が、名人の歴史や人となり、エピソードなどを記している。
登場するのは、木村義雄、大山康晴、升田幸三、中原誠、谷川浩司、羽生善治など、みな才能と人間味に溢れた人ばかり。50年以上にわたって現役の棋士として活躍を続けている著者の書く話は、どれも生彩に富んでいて面白い。さすがにプロだけあって、何十年も前の対局の一手一手を、その場の雰囲気も含めて克明に覚えている。
それぞれの名人についての描写は、偏りなく公平になるように努めているが、やはり自ずと好き嫌いは滲み出るものらしい。大山、谷川に対する筆がやや辛口となっている感じがした。そんなところにも著者の人間味が表れていて面白い。
明日から2日間、第70期名人戦の第5局が京都で行われる。森内俊之名人と挑戦者羽生善治二冠の戦いは、現在2勝2敗の五分。どちらが先にリーチをかけるか、楽しみである。
2012年5月10日、角川ONEテーマ21新書、743円。
私が将棋に興味を持ち将棋会館によく通っていたころ、加藤名人誕生で棋界が湧きました。持将棋1局、千日手2局の大熱戦でした。名人とは大山、中原の指定席だと思っていたところに著者が割って入ってきたことに驚愕したものです。
本著のサブタイトル「奇人・変人・超人」は登場する大山、升田、中原らを指すのでしょうが、一番の「奇人・変人・超人」は加藤自身であることを将棋ファンは知っています。そんな加藤の目から見たライバルたちはどのように映っているのでしょう。敬虔なクリスチャンという側面とも合わせて読んでみたいです。
ところで今年の名人戦。羽生が奪回するような気がします。
どうやら世間から私は「変わり者」だと思われているらしい。
と書いてますね。少なくとも、自分がそのように見られていることは知っているようです。
「信じ、祈ることで実力以上の力を出せる」など、信仰に関わる話も出てきます。面白い本でした。
河合隼雄さんと谷川さんとの対談の本を読んで、将棋って奥が深いな、、、と思っていたら、紹介されていたので、昨日から読んでいます。
それぞれの将棋士の個性が伝わってきて、おもしろいです。
対戦の時、リズムを作るためにする事、座布団の凹み具合を見る、
こんなことまでやるのか、、、
私は著者の加藤さんのことはまったく知らず、
どのように変わり者なのか、ご本人の文からはよくわかりませんでした。
加藤さんについては、本の中に「残り時間を何度も聞く」「将棋盤の位置を動かす」「何度も空咳をする」といった話が書いてありましたが、他にも「ネクタイを畳に着きそうなくらい長く結ぶ」「対局中に板チョコをばりばり食べる」「旅館の人工の滝の音が耳障りで止めさせた」といったエピソードがあります。
おもしろいですね。
怒られたり、真剣勝負の間の話ですが、だからよけい、笑ってしまいました。
「私の会ったひとびと」の中で、松村さんの、岡山時代のエッセイに触れる箇所があり、そちらは拝見したことがなかったので
先日の記事で少し読む事ができてよかったです。
とても嬉しかったです。
岡山に住んでいた頃はまだ短歌をやっていなかったのですが、
自分の短歌のベースには、いつもあの頃のことがあるような
気がしています。