2012年05月12日
原武史著『震災と鉄道』
東日本大震災と鉄道の関わり、特に震災後の鉄道の復興のあり方について論じた本。
震災から49日後に全面復旧した東北新幹線に対して、石巻線、気仙沼線、大船渡線などの在来線は、依然として復旧の目途が立っていない。そうした現状を踏まえて、暮らしに密着したローカル線こそ早期に復旧すべきだとの持論が述べられている。
その持論の元になっているのは、鉄道が単なる輸送手段であるだけでなく、駅や鉄道の車内が公共的空間であり、その土地に住む人々にとってコミュニケーションや安心を得る場になっているとの認識がある。自動車と比較して考えてみれば、著者の言わんとするところはよくわかる。
ただ、残念なのは、本書がもともとウェブマガジン掲載のインタビューに加筆修正したものであるためか、内容がやや散漫であることだ。話題が次から次へと変わり、論拠が不十分な部分も多い。特に後半は、震災とは離れてJR東日本の体質やリニア開発を進めるJR東海への批判に重点が移ってしまったように感じた。
2011年10月30日、朝日新書、760円。
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