2012年05月04日

雨水

「塔」4月号にこんな歌がある。
冬至より六十日目の対岸に欅は梢をけぶらせて立つ
              永田和宏

「冬至より六十日目」という限定の仕方が目を引くが、これは多分、二十四節気の一つ「雨水」(2月19日頃)を指しているのだろう。雪が雨に変わり、寒さも峠を越す時期。葉を落とした欅の細い梢が、かすんだように対岸に見えている。

この歌の元になっているのは、おそらく岡部桂一郎の次の一首。
夏至すぎて第十一日目太陽はからすびしゃくの繁る上に来つ
             岡部桂一郎『戸塚閑吟集』

「夏至すぎて第十一日目」は雑節の一つ「半夏生(はんげしょう)」(7月2日頃)を指している。からすびしゃくが別名「半夏」と言い、からすびしゃくが生える時期だから「半夏生」という名が付いたことを知っていると、この歌はいささか即き過ぎの気がしないでもないのだが。

posted by 松村正直 at 00:34| Comment(0) | メモ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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