高島裕の個人誌「文机」の終刊号が届いた。
終刊号もこれまでと変らず、A5判8ページの冊子に短歌と散文、編集後記が載っている。
屋根雪にさらに梯子を突き立てぬ。下より照らす母のともしび
夜もすがら屋根雪溶ける音のしてわが夢をゆく春の日輪
文机、しづけき夜に物書けばこころの底にみづうみの見ゆ
「年に四度、季節の風が変はるごとに、号を重ねたい」(創刊号)の言葉通り、「文机」は平成16年春から平成24年春まで、8年間にわたって着実に号数を重ねてきた。その成果は、第四歌集『薄明薄暮集』や散文集『廃墟からの祈り』にまとめられている。
この8年の間に高島は、自らの進むべき方向を見つけ、確かな自信を手に入れたように感じる。個人誌「文机」が、その大きな支えとなったのだろう。『薄明薄暮集』の歌の配列が春夏秋冬といった部立となっているのも、「文机」が季刊であったことと深く関わっているように思う。
「これまでとは違つた新しい発信の形を作ることへの意欲が湧いてきた」(終刊号)と記す高島の新たな出発と、今後のさらなる活躍に期待したい。
平成24年3月1日発行、300円。