副題は「文学における科学の光景」。
文系と理系という二つの文化の乖離を嘆き、「新しい博物学」を提唱する著者が、文学と科学との橋渡しを意図して記した本。科学的な知識を踏まえて、文学作品を読み解いていく。
この本は、もともと『天文学者の虫眼鏡―文学と科学のあいだ』というタイトルで文春新書から出ていたものらしい。その絶版を機に、加筆修正の上で祥伝社から文庫となって出たとのこと。タイトルが全く違うので気が付かなかった。
「予知夢(明日亡くなる人の夢を今晩見る)を見る日本人が、1日26人もいる」とか「コップ一杯の水には、ニュートンの脳細胞を作っていた原子が4000個も含まれている」とか「藤原定家の『明月記』の記述が超新星の研究に貢献した」とか、おもしろい話がいっぱい載っていて、気軽に楽しむことができる。
著者の池内了(さとる)は宇宙物理学者、天文学者。ドイツ文学者の池内紀(おさむ)の4歳下の弟であり、この本にも幼い頃の兄とのエピソードがさり気なく記されている。
2012年3月24日、祥伝社黄金文庫、571円。
2012年04月02日
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