2012年03月27日

三枝昂之著 『啄木』

副題は「ふるさとの空遠みかも」。
啄木の「ふるさとの空遠みかも/高き屋にひとりのぼりて/愁ひて下る」から取られている。

明治41年4月25日、「モ一度東京へ行つて、自分の文学的運命を極度まで試験せねばならぬ」と決意して上京した啄木が、明治45年4月13日に亡くなるまでの約4年間、1450日の日々を追った評伝。

当時の新聞や雑誌など豊富な資料を駆使するとともに、国際啄木学会をはじめとした研究者たちの最新の研究成果を踏まえ、さらにそこに実作者としての丁寧な歌の読みや短歌史的な裏付けを加えて描いている。

決して先走ることなく、読者を十分納得させた上で話を進めていく。その語り口が心地よい。このゆったりと書くということが、実は一番難しいことなのだと思う。手持ちのカードに十分なゆとりがなければ、なかなかそうはいかない。

晶子に代表される和歌革新第1世代の歌が言わば高熱の歌であったのに対して、第2世代の啄木は「平熱の自我の詩」を実作面でリードしたという指摘は、非常に納得できるものだと思う。

2009年9月30日、本阿弥書店、2800円。

posted by 松村正直 at 00:42| Comment(1) | 石川啄木 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 啄木の歌

なにゆえに彼の歌には魅了するものがあるのだろうか。

○平明でだれにも分かる、ひとりよがりがない。
○名歌がごろごろしている。
○かなしみの歌が多い。
○三行歌で特異。
○虚実ではなく真実性がある。
○巧みな詩と表現にすぐれている。
○平凡の中に非凡がある。
○写実と浪漫が熔けあっている。
○歌格の大きいものがある。
○人生的である。
○つかみ方が大きく精妙。
○聡明さを感じる。
○わたしの好きな歌は初恋の歌。
○歌づくりに迷ったならば彼の歌を尋ねよ。
○歌そのものが優れている。
○天与の才。
Posted by 小川良秀 at 2012年03月28日 12:48
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