2012年03月24日
斎藤由香著 『猛女とよばれた淑女』
副題は「祖母・齋藤輝子の生き方」
斎藤茂吉の妻であり、斎藤茂太・北杜夫の母親である斎藤輝子の生涯と思い出を綴った本。著者は北杜夫の娘であり、輝子の孫にあたる。
89歳で亡くなるまでに世界108ヶ国を旅したパワフルで自由奔放な生き方を、愛情に満ちた筆致で描き出している。
輝子は好奇心の旺盛な人だったようで、海外旅行もあまり人が行かないような場所を選んで出かけている。76歳でモンゴル旅行へ行った際に、ソ連のイルクーツクで腸閉塞になって死にかかったり、81歳でペルーのチチカカ湖に落ちたりと、どれ一つ取っても驚くような話ばかり。
茂吉と輝子はそれぞれに個性が強く、13歳の年齢差があり、生まれも育ちも全く違った。この夫婦の仲がうまく行かなかったのは、ある意味当然のような気がする。
マウンテンゴリラが見たくて、ガイドに背負ってもらいアフリカの奥地へ行くところなど、日本各地の崩落地を訪ねた『崩れ』の幸田文の姿とも重なる。明治の女性はとにかく強い。
2008年2月20日、新潮社、1400円。
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