2012年03月07日

古沢和宏著 『痕跡本のすすめ』

古沢 和宏
太田出版
発売日:2012-01-26


著者は愛知県犬山市にある古本屋「古書 五っ葉文庫」の店主。1979年生まれとあるので、まだ三十代前半の方だ。

「痕跡本」とは聞き慣れない言葉だが、それもそのはず、著者が作った言葉である。傍線が引かれていたり、感想が書き込まれていたり、ページの間に手紙やレシートが挟んであったり、ページが折られたり、破かれていたりといった古本のことを指している。
すべての古本には、前の持ち主がその本と過ごした時間という「物語」が刻まれているのです。/それが目に見える形で残されているもの、それが痕跡本。/そこには、本の内容だけじゃない、前の持ち主と本を巡る、世界でたったひとつだけの物語が刻まれています。

著者の言いたいことは、この前書きに要約されている。本書は、カラー写真でその実例を示しつつ、その痕跡に含まれている物語や謎を読み解いていくという内容となっている。

最近はやりのブックオフなどの新古書店では味わえない楽しみ方であり、非常におもしろい着眼点だと思う。かなりマニアックで、B級な本であるにも関わらず、朝日新聞、読売新聞の書評欄で同じ日(3/4)に取り上げられていたので、ちょっと驚いた。

2012年2月17日、太田出版、1300円。

posted by 松村正直 at 00:32| Comment(4) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
もう三年前になりますが、高遠ブックフェスティバルという「本の祭典」ともいえる催しに出かけたとき、出店されていた著者の方とお会いしたことがあります。「痕跡本ツアー」といって、期間中高遠の町に臨時出店している多くの古書店に実際に出向いて痕跡本を探し、その成果を公表するという趣向でした。加えて、これまでに集めた古沢さんご自慢の痕跡本も拝見しました。私は歌集を中心に探しましたが、書き込みや印が残されているものや、中にはメモ書きや手紙まで挟まれているものもあり、大変興味深かったことを記憶しています。
Posted by 村田馨 at 2012年03月07日 18:08
高遠ブックフェスティバルの「痕跡本ツアー」の話は、この本にも書いてありました。
私も古本屋で歌集を買って、中に有名な歌人の手紙が入っていたことがあります。
Posted by 松村正直 at 2012年03月08日 00:13
古沢さんは、元気でガッツのあるひとで、犬山でのブックフェスティバル運営にも取り組んでおられます〜。
痕跡本と言えば、私はHさんが葛原妙子さん宛に献本された歌集を、Hさんの大変美しいお手紙ごと発掘したことがありました(Hさんにお手紙ごと謹呈したら、大変懐かしがってらっしゃいました)
Posted by ぴりか at 2012年03月08日 11:29
歌集は謹呈することが多いので、痕跡本になることも多いのでしょうね。歌に○印が付いているのも、しばしば見かけます。僕自身はもっぱら付箋を貼っていますが。
Posted by 松村正直 at 2012年03月08日 21:12
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