首尾よく滝の上に出たが、もっぱらの問題は滝で岩魚が止まっているかいないかだ。少し遡ったが、岩魚の姿を見ることはできなかった。
昨日最後に登った滝が魚止めだったようで、岩魚の姿はない。
昔、山で働いた人々がタンパク質確保のために、釣り上げた岩魚を滝の上に放して、岩魚の棲息範囲を広げていったとよく言われる。
これを読んで思い出したのが、次の一首。
魚止めの滝なる落差を見上げいてその上(かみ)に岩魚(いもうお)いるを
言う老(おい) 永田 淳『1/125秒』
「魚止めの滝」は魚が遡ることのできない落差を持つ滝のこと。「いもうお」はイワナの方言で、主に滋賀県での呼び方らしい。
この歌は、おそらく地元の老人が、釣り人である作者に、「魚止めの滝」の上流にもイワナが棲息していると教えてくれた場面。山で働く人や釣り人が放流したイワナの子孫たちなのかもしれない。