石田比呂志さんが亡くなった時の様子を記した連載「その日の石田さん」の2回目が載っている。電話がつながらないことを心配して、上野さんは石田宅を訪れ、意識不明の石田さんを発見する。以下、119番の電話でのやり取り。
「お幾つですか」やっと向こうが声を発した。「八十歳です」「御家族の方ですか」「いいえ家族はいません。一人暮らしです」「独居老人ですね」「はい」。はいと答えながら動揺した。(…)石田さんは特別な人だ、ただの年寄じゃない、そう言いたかった。でも独居老人ですかと聞かれると「はい」としか言いようがない。
この気持ち、よくわかる気がする。
ドッキョロージンというのは、確かに冷たい語感の言葉だ。普段はそれほど感じなかったであろう違和感を、119番の電話という緊迫した場面で感じたというところに、何とも言えないリアリティがある。
2012年1月25日、300円。