「塔」の河野裕子追悼号(2011年8月号)に22ページにわたる「河野裕子初期作品一覧」を掲載したが、あれで全てが網羅できているわけではない。調べた私自身の感触で言えば、多分8割程度ではないだろうか。きっとまだ見つかっていない作品が残っている。
未確認の作品のなかで、最も可能性が高いのは「生方たつゑ選」に採られた歌である。これについては、河野さん自身が次のような歌を残している。
高校生の頃、生方たつゑ選に幾度か入った
昨夜(きぞ)の雪藪に垂(しづ)るはしづかなり若き日知らざりし選者のこころ
『日付のある歌』
また、「新聞歌壇をめぐって」という座談会でも、次のように発言している。
河野 (…)生方たつゑさんとこにも出したなあ。生方さんが私の歌にではないけど、「短歌は短いからたくさんのことを書いてはいけません」て評してらしたりしたの、よく覚えてるんですよ。 「塔」2010年1月号
つまり、確実に「ある」のだ。
それなのに見つからないものだから、悔しくて仕方がない。