2012年01月09日

召集令状

青磁社HPの「週刊時評」での論争から発展して、2007年に「いま、社会詠は」というシンポジウムが京都で行われた。その中で取り上げられた歌に次の一首があった。
おそらくは電子メールで来るだろう二〇一〇年春の赤紙
               加藤治郎『環状線のモンスター』(2006)
小高賢さんが、この歌など4首を引いて「私は、このような作品にかなりの危惧を持つ。一体、社会と自分の関係をどう考えているのだろうか。危機感がゼロのように見えてしまう。加藤の電子メールと赤紙のとりあわせ。どう読んでも他人事である。二〇一〇年はまもなくである。そんなことが現実的にありえない。何かをいえたと思うのはかなりの錯覚ではないか」(「かりん」2006年11月号)と、厳しく批判したのであった。

最近、同じようなモチーフを詠んだ歌を続けて目にした。
ケータイの画面突然赤いろに変はりて届け召集令状
               本田一弘『眉月集』(2010)
@(アツトマーク)まなこに見ゆる真夜中にふと来(く)や〈召集令状メール〉
               大塚寅彦『夢何有郷』(2011)
あのシンポジウムから、間もなく5年。メールと召集令状の取り合わせは、今では意外ではなく、むしろ普通のことになったような感じさえ受ける。

posted by 松村正直 at 23:17| Comment(0) | メモ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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