放射能のこともいつしか言はなくなり雨が降る一月一日の晩まるで2012年現在の状況を詠っているかのような一首だが、もちろん今年の歌ではない。これは昭和34年(今から53年も前)に作られた歌である。
清水房雄『一去集』
この歌の作られる5年前、昭和29年に第五福竜丸が水爆実験により被爆して船員が死亡するという事件が起きた。その後、「放射能マグロ」の問題などもあり、国内で反核運動が大きな盛り上がりを見せたのである。
この歌はおそらく、そういう時代を背景にした一首なのだろう。雨の降る夜の不安な思いが、ひしひしと伝わってくる。