その頃は、「塔」の再校作業を毎月第1日曜日に行っていて、その日も午後から京阪電車と叡山電鉄を乗り継いで、岩倉にある永田家まで出かけた。永田家がまだ建て直し前の建物だった頃のことだ。
僕はその年の4月に京都に移ってきたばかりで、再校には5月から参加し始め、ようやく半年が経ったところだった。その日に書いた編集後記は「塔」2002年1月号に載っている。
▼今日(12月2日)の明け方に長男が生まれた。病院に着いて一時間あまりのスピード出産。生まれたての顔は何だかビリケンに似ている。 (松村)他の参加メンバーの方から「こんなとこに来てていいの?」とか言われるたびに、「いやぁ、病院にいても何もすることないですから」などと笑って答えていたのを懐かしく思い出す。
あれから、もう十年が過ぎたのだ。
五年後は五歳、十年後は十歳、子の年齢で未来を計る
『やさしい鮫』