副題は「天気と日本史」。
著者は気象予報士。本のタイトルや「博多湾で神風が吹くでしょう」「壇ノ浦では潮の満ち干きにご注意ください」などの章題を見てもわかるように、歴史的な事件の様子を気象学の立場から解き明かしたもの。
事件の起きた日の天候を推理して、そこから事件の謎に迫っていく手法は、とても刺激的でおもしろい。気象歴史学とでも呼ぶべきものだろうか。気象と歴史という一見関係のなさそうなジャンルが交差して、新しい化学反応が起きるような面白さである。
僕も「短歌×歴史」とか「短歌×民俗」といったことを考えることが多いので、こうしたジャンルを跨ぐ考え方や方法には非常に共感する。
ただし、全6章すべてが面白いというわけではない。本格的な新ジャンルの開拓は、まだ始まったばかりという印象である。特に、謎解きの際に引用する文献の信頼性に対する検討が弱いように感じた。
マルコ・ポーロは文永の役の翌年頃から20年間近く中国に滞在したといわれています。当然弘安の役を直接体験した人たちから話を聞いたかもしれないと考えると、台風の記述に関しては、信じてみてもいいのではないでしょうか。この部分にしても、「当然」→「聞いたかもしれない」というあたりの、呼応しない言葉のつながり方に、そうした弱さが垣間見えるように思う。
2011年10月31日、メディアファクトリー新書、740円。
いつも関門海峡を見下ろすたびに、戦の日はどんな天気の日(どんな海の色)だったのか気になっていました。
朝こちらのブログを拝見してこちらの本を知り→昼にネットで注文→夕方には本が手元に届く。まったく便利な世の中になったものだ。
ふるさとはあちらの方なんですね。以前、門司で歌会をやったことがあります。
この本は、著者の持ち込み企画のようで、あとがきに「神風の論文といくつかの短文を数社の出版社に送ったところ、メディアファクトリーから新書として出版したいという好意的な返事をいただきました」とあります。短歌の文章では、なかなかそううまくいかないと思いますが、でも、そうした積極性も大事だなあと思いました。