出演:小林聡美、加瀬亮、黒木華、原田知世ほか
「かもめ食堂」「めがね」「プール」「マザーウォーター」に続くプロジェクトの第5作。今回の舞台は東京。一人の主人公をめぐる3つの話から成り立っている。それぞれ良い話だと思うし、俳優さんも好きな人が多いのだが、肝腎な点で今ひとつ乗り切れなかった。
それは、東京という街で、見知らぬ人に話しかける(あるいは話しかけられる)ことに、どれだけのリアリティがあるのかということ。物語の出発点がそこにあるだけに、どうしても気になった。
その点、「歌壇」11月号で穂村さんが発言していたことは印象的だった。
(…)今の東京のスタンダードでは電車の中の人や道をすれ違う人としゃべらない。昔のご近所づきあいみたいな感じじゃないから。でも、あのとき(震災直後・松村注)だけは知らないおっちゃんとかがみんなにいっぱい話しかけたりして、それに普通のOLさんも答えるような感じで。だから、スタンダードが一瞬にして(変わり)、対人関係の距離が近づいて共感的になったというか、それは覚えてますね。実によくわかる例であり、明晰な分析だと思う。
京都シネマ、83分。