最近はまったく読んでいないが、高校生の頃は『どくとるマンボウ』のシリーズや『さびしい王様』3部作、『楡家の人びと』『夜と霧の隅で』など、新潮文庫の北杜夫作品に読みふけっていた。今でも親しみを感じる名前である。
短歌関係では、やはり茂吉4部作が忘れがたい。
北杜夫は戦後、茂吉が箱根強羅の山荘へ行く時に同行することが多かったようで、歌集『つきかげ』にたびたび登場している。
わが次男に飯を炊かしめやうやくに心さだまるを待ちつつぞ居る4首目は昭和26年、茂吉の最晩年の歌である。
次男と二人よひはやくより寝(いね)むとす電灯つかぬ一夜(ひとよ)の山の中や
孫太郎虫(むし)の成虫を捕へ来て一日(ひとひ)見て居りわれと次男と
仙台の宗吉よりハガキのたよりあり彼は松島を好まぬらしも