2011年10月16日

たっぷりと

10月14日の読売新聞(大阪本社版)夕刊の「言葉のアルバム」という欄に、日本語学者の山口仲美さんが出ている。山口さんは『犬は「びよ」と鳴いていた』(光文社新書)などの著者であり、以前「短歌研究」でオノマトペをめぐって小池光さんと対談をしていた。
 インタビューが終わる間際に、「では、私から問題を一つ」と言ってフフフと笑い、「俵万智さんの短歌〈○○○○と君に抱かれているようなグリンのセーター着て冬になる〉の冒頭に入る言葉は?」と続けた。選択肢は〈ふんわり、こんもり、がっしり、たっぷり、さっくり〉―。
 物質的、心情的な充足感を同時に与える「たっぷり」は正解。(…)
これまで気にもとめていなかったが、こうして説明されると「たっぷりと君に抱かれて」という表現には工夫のあることがよくわかる。

そして、この文章を読んで思い出したのが、「河野裕子を偲ぶ会」の時の岡井隆さんの話である。岡井さんは「たつぷりと真水を抱きてしづもれる昏き器を近江と言へり」について、次のように述べていた。
 (…)あの実は、「たつぷりと」というのは、たっぷりと聞かせてくださいとか、たっぷりと何かが盛られてる感じでしょう。そうすると、「抱く」というのとは直接は結びつかない副詞ですよね、細かく言えばですよ。(…)
 ところが、不思議にこれで落ち着くんですね。我々は何となく「たつぷりと」というのが「抱く」という動詞にかかっても構わないんじゃないか。(…)
「たつぷりと真水を抱きて」と「たっぷりと君に抱かれて」、こんな所にも意外な共通点があるのだった。面白いなあと思う。

posted by 松村正直 at 22:13| Comment(0) | メモ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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