歌誌「合歓」に連載されたものを中心に、40名の歌人へのインタビューを一冊にまとめたもの。久々湊さんのインタビュー術とでも言うべきものが十二分に発揮されている。
一つ目は、相手の住む土地へ出かけて行ってインタビューしていること。言わばホームグラウンドで話をするのだから、相手もリラックスして話ができる。また風土と人との関わりも見えやすい。
二つ目は、事前にその人の歌集や評論などを読んで、十分な準備をしてから話を聞いていること。そうした準備をしているからこそ、インタビュー中はむしろ自由に話題を展開でき、遠慮なく相手の懐に入り込んで話を引き出すことができるのだろう。
そして三つ目は、丁寧に編集をしていることである。単にテープ起こしをするだけでなく、例歌を追加したり、話の流れを整えたり、全体がひとつの読み物として成り立つような配慮がされている。
40名それぞれに印象に残る発言が多いのだが、中でも青井史さんの話は心にしみた。当時、肺癌の治療中であった青井さんは、インタビューの翌月に亡くなっている。
誰もがこの世に生まれて、いろいろな苦労をして、そして死んでいく。そんな当り前のことがしみじみと思われる一冊であった。
2009年8月30日、砂子屋書房、3500円。
2011年10月15日
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