2011年10月10日

「塔」2011年10月号

「塔」10月号の最初のページに次の一首が載っている。
つかのまの後先(あとさき)ありてと詠ひたる人の齢の思はれて 夏
                  永田和宏
この歌はもちろん、土屋文明の次の歌を元にしている。
終りなき時に入らむに束の間の後前(あとさき)ありや有りてかなしむ
                 土屋文明『青南後集』
昭和57年に文明の妻テル子が亡くなった時の歌である。テル子は93歳であった。同じ一連に〈ここのそぢ共に越え二つの姉なるを安らぎとして有り経しものを〉という歌もあるように、テル子は文明の2歳年上であり、文明はこの時91歳。

永遠の時間の流れのなかにあっては、先に死ぬのも後に死ぬのも大した違いはない。それでも、やはりその差がかなしいという歌である。

永田さんの歌に戻れば、妻を亡くしたと立場という点では文明と同じであるものの、亡くした時の年齢は63歳。河野さん64歳。早すぎる死と、その後につづく長い歳月のことを思うと、なおいっそう深い悲しみを覚えるのであろう。

posted by 松村正直 at 19:58| Comment(0) | 短歌誌・同人誌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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