うらなりのカモウリの根に十月八日米のとぎ汁かけて励ますカモウリという言葉は初めて聞いた。調べてみると、冬瓜(とうがん)の古い呼び方で、大阪などでは今でもよく使われる呼称のようだ。(カモウリと冬瓜は似ているけれど、別物だという話もある)
河野裕子『紅』
「うらなり」は、蔓の先っぽの方になった実のことで、成育の悪いことも意味している。そこから転じて顔色の悪い元気のない人のことも指すようになったらしい。『坊っちゃん』に出てくる英語教師のあだ名にも使われている。
そんな弱々しいカモウリ君を励まそうと、作者は米のとぎ汁を与えるのである。庭先で育てていたのだろう。
この歌は、何と言っても「うらなりのカモウリの根に」という言葉のながれ具合がいい。さらに言えば、十月八日という日付も単なる事実のようでありながら、微妙に「米」という漢字と響き合っている。そんな印象を受ける。