大辻隆弘さんの「斎藤茂吉の作歌法―『ともしび』から『白桃』まで―」が抜群に面白い。9月号に前編、10月号に後編、あわせて35ページという分量。今年3月に行われた「斎藤茂吉を語る会」の講演に加筆したものである。
茂吉の「てにをは」の効果、実感の捏造、手帳と比較して見えてくる歌の作り方など、具体的な例歌に即して、一つ一つ丁寧にわかりやすく述べている。樺太の養狐場の狐の吠える歌についての分析など、推理小説さながらの鮮やかさである。
茂吉の歌の面白さを、このように言葉のレベルで解き明かしていく作業というのは、今後ますます必要になってくるだろう。茂吉が苦心を重ねて言語化した歌に対して、われわれ読む側も苦心してその読みを言語化していかなければばらないのだ。
2011年10月01日
この記事へのコメント
コメントを書く