2011年09月29日

岡井隆 編『感じる歌人たち』

岡井隆の対談集。1991年に朝日カルチャーセンター(名古屋)の企画で、月に1度、計7名の歌人と対談した内容が収められている。対談相手は馬場あき子、島田修二、小池光、前登志夫、河野裕子、春日井建、俵万智。

20年前の本だが、とにかく面白い。今、読んでも少しも古びた感じを受けない。示唆に富むやり取りがいっぱいあって、グイグイと引き込まれる。これがホスト役の岡井さんの魅力でもあるのだろう。

印象に残った発言を引く。
「この頃の短歌というのは本当に面白くなってきて、なんでもない歌のよさを鑑賞する人がいなくなってしまった。それをいつも感じるんです。なんでもない歌をいいとは思っているのに、どこがいいかを言えなくなっている」(馬場あき子)
「(白秋の)ピークは、初期の「雲母集」あたりで一回、そして晩年にもう一回輝きます。人間は一回はどこかで輝くという気がしますが、二回も輝くのは大詩人、大歌人です」(島田修二)
「(散文の仕事は)結論が問題じゃなくてそこに至る道すじのようなものこそが目的なわけです。結論なんか最初からわかってることでもいいし、わかってなくてもいい。その思考の過程の肌ざわりが、そっくり文学作品になってしまう」(小池光)
「俺の中には文学としていちばん弱い短歌的なものがある、それをやっつけなければだめなんだと、小野さん(十三郎)は、言うんですね。そして酒が入ると、啄木の歌を翁とも少年ともつかない顔で、朗詠される」(前登志夫)
「あの頃生まれて初めて書いた「いのちを見つめる」という五十枚ほどの文章。読み返してみて、ひどいもんです。熱気だけで書いてメチャメチャです」(河野裕子)
「(松平盟子さんの歌は)痛みをむき出しにしていますね。それも自己顕示欲の表れかもしれない。でも、痛みをあらわにしているからといって同情することはない。もっと痛んでくれた方が愉しいかもしれない」(春日井建)
「「サラダ記念日」を編集したときは、歌を全部短冊に書いて、洗濯バサミでとめて、あっちがいいかな、こっちがいいかなと、順番を考えてたんです」(俵万智)
これら7人のうち、4人は既にこの世を去ってしまった。こうした発言も、今では貴重な記録と言えるだろう。

1992年6月22日、エフエー出版、1700円。

posted by 松村正直 at 19:39| Comment(0) | 歌集・歌書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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