2011年09月25日

森岡貞香歌集『帶紅』

『九夜八日』『少時』に続いて没後に出版される3冊目で、これが最終歌集になる。題名については
読み方は「たいこう」と読んでも良いのですが、ぴったり来ないので、くれなゐの読み方にこだわり「くれなゐ帯びたり」と仮名をふりました。
と、後記に森岡璋さんが記している。

題材は庭の木にいる山鳩や近所の空地、椿やさざんかなど、日常の身めぐりのものがほとんど。それでいて、歌は単調になっていない。一首のなかに複数の時間が含まれている点に特徴があるのだと思う。一枚の絵を見ているつもりで歌を読んでいくと、突然それが動き始めるような、そんな奇妙な印象を受ける。
朝朝にコップいつぱい水を呑む鉢植ゑの小菊 夜半に見てゐぬ
なぜなれば磐城の道のべに立ちゐたり汝とわれと壊れしくるま
をとつひかさきをとつひか見ぬあはひに遺影の前の薔薇は散りたり
核燃料を運ぶ車輛に會ひたる日の夜を月山の麓にねむる
えんぴつは手より落ちやすく秋まひるものを思ふとまどろみともなし
朝ありて髮を束ねつ 在るわれの常のかたちになりぬるあはれ
なんとなく見知らぬ影は中庭の椎の太枝の伐られたるなり
菊を見に來よと誘はれし日の近づくに手帖の菊の字消えかかりゐる
汝と母との冩眞の殘るべく秋田縣由利本庄の酒店「天壽」の杉玉の下
この夜半に寢返りを打つ寢返りて向きを變ふるはみづからのため
(引用歌は実際はすべて正字です)

2011年9月30日、砂子屋書房、3000円。

posted by 松村正直 at 10:55| Comment(0) | 歌集・歌書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。